股関節痛を解消する方法
要手術の股関節痛を解消する方法昔の股関節痛に対する私の考えは、従来の常識と同じでした。股関節痛は軟骨のすり減りで起こり、病状は悪化の一途をたどり、最終的には手術が必要になると思い込んでいたのです。
「そもそもなぜ股関節が変形せざるを得ないのか?」
その原因は股関節の動きが長年制限され、骨がその状態に適応していったしまった結果起こることなのです。
転機が訪れたのは、独立をめざして大阪府のとある整骨院に移った11年前のこと。代表の先生が、「筋肉を強く押すと痛みが治る」という独自の理論のもと、患者さんの治療にあたっており、実際に患者さんの間でよく効くと評判になっていたのです。私自身も、股関節痛に悩む女性が来院したさいに、こりがひどいお尻周辺の筋肉を押してもみほぐしました。するとその女性は「しっかり足を床に着けて歩けるようになった」と驚いていたのです。
そうした症例を見て、股関節痛の従来の常識は本当に正しいのかという疑問が頭の中でうず巻きはじめました。同時に、筋肉へのアプローチこそ股関節痛を根治に導く最善の治療法なのではないかと考えるようになったのです。
その後、筋・筋膜症候群について書かれた文献を読んだ私は、大きな衝撃を受けました。股関節痛や腰痛などの関節痛の八五%は、痛みを発する筋肉のこり、すなわち「発痛こり」に原因があるというのです。私はいよいよ治療に対する考え方を一八〇度改める必要があると感じました。
回復ぶりに
私自身も驚いた
私が、筋肉の発痛こりをほぐす治療の効果を確信したのは、ある一人の患者さんの治療を行ったときでした。
埼玉県に住むAさん(七十歳)は、今から一六年前、股関節痛を訴えて当院を訪れました。左足を地面に着けると強く痛むため、立つことすらままならず、一年以上、車イスの生活を続けていました。
整形外科では股関節の変形が確認され、治療を続けていたそうですが、保存療法(手術以外の治療法)では改善せず、最終的には医師から手術をすすめられたそうです。手術の二文字に大きな抵抗を感じ、わらにもすがる思いで当院を訪ねてきました。股関節の発痛こりの場所を見定めた私は、Aさんのお尻や下半身の筋肉を丹念にもみほぐしていきました。
その後も通院を続けてもらって筋肉へのマッサージを行った結果、わずか一カ月後には、車イスには乗らず、杖だけを使って、電車を乗り継ぎながら自力で来院できるまでに回復していたのです。私自身、その回復ぶりにただただ驚くばかりでした。
変形は
そのまま
治療を始めて三カ月後にはさらに痛みが改善し、自宅では壁に手をつきながらも自由に動き回れ、身のまわりのことを自分でできるようになったそうです。
その後も通院治療を続けたAさんは、二年後には杖も不要になり、四年後には痛みが根治しました。前から行きたかった香川県の金刀比羅宮への旅行もかなったそうです。もちろん、現在も再発はありません。
ちなみにAさんの股関節は今でも変形したままです。一六年前と現在のレントゲン写真を比べても、骨の状態は全く変わっていません。おそらく、初来院の時点でAさんの股関節痛は安定期に入っていたのだと考えられます。そのため、筋肉の発痛こりが解消したら症状も急改善し、運動機能も回復したのです。
その後、私は多くの患者さんを治療しながら、特に発痛こりが取り除きにくい深部筋を効率的にほぐす施術法を模索し、その方法を確立させました。
その方法を用いた治療を行うことで続々と回復する股関節痛の患者さんを見ながら、私は確かな手ごたえを感じています。